親子が言い争うシーンのセリフが妙にリアル。思わず自分の家族を思い出してしまいました。

竹田[cinemonde]

「歩く、人」

監督:小林政広
出演:緒方拳、林泰文、占部房子、石井佐代子、大塚寧々、香川照之
[2001/日本/1h43]
2001年カンヌ国際映画祭公式出品“ある視点”部門

愛妻の三回忌に、
ふたたび息子たちとの絆を取り戻そうとする男…

〈ストーリー〉

にじみ出る、父と二人の息子の不器用な家族愛。
母を亡くした家庭の再生のドラマ。

 北海道増毛町、酒屋を営む66歳の本間信雄は2年前にがんで恋女房を亡くし、家業を継いだ次男と二人暮し。長男は12年前に家を飛び出し、恋人と同棲しながら芽の出ないバンド活動をしている。孤独な信雄の唯一の楽しみは毎日片道8キロ、鮭の孵化場に通い、ほのかに恋心を寄せる職員の美知子と語らい、鮭の稚魚たちの成長を眺めることだった。2日後に迫った亡き妻の三回忌、久しぶりに息子と再会する。信雄はこの機にもう一度息子と歩み寄りたいと思っていた…。

3年連続カンヌ国際映画祭出品を果たした
小林政広監督の希有な才能。
緒方拳との出会いが生み出した、
パーソナルであるが普遍的な映像世界

 本作『歩く、人』で『海賊版=BOOTLEG FILM』、『殺し』に続き3年連続カンヌ国際映画祭に出品を果たした小林政広監督。監督が16年前に書いたシナリオを緒方拳が再発見、「この父親役を是非演じたい」と申し出て、舞台を北海道に移し映画化。自身が育った家庭と家族との経験を元に撮り上げた『歩く、人』で、これまで描かれることの少なかった「男」の親子関係を「男」の視点で描き、見事に新境地を開いた。
 父親の孤独感と頑固さをユーモアで包み込み、圧倒的な存在感をみせる緒方拳。タイトルの題字、本編に挿入される自作の川柳も緒方の直筆と、多才ぶりを発揮している。テレビ、映画に活躍目覚ましい香川照之は、理想と現実のギャップに葛藤する長男を絶妙に演じた。そして繊細な雰囲気の中に男らしさを湛えた次男役の林泰文。また、男たちを優しく見守る芯の強い女性像を大塚寧々、占部房子、石井佐代子が演じ、映画に温かみを与えている。そして、名曲サン・サーンス「動物たちの謝肉祭」の楽曲が映画に溢れんばかりの詩情をもたらしている。