DEEP SEIJUN 清順特集
「ツィゴイネルワイゼン」
監督:鈴木清順
出演:原田芳雄、大谷直子、藤田敏八、大楠道代、真喜志きさ子、
麿赤児、樹木希林
[1980/日本/2h24]
日本アカデミー賞:最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀助演女優賞(大楠道代)、最優秀美術賞
ブルーリボン賞:最優秀監督賞、特別賞(『ツィゴイネルワイゼン』の映画製作・上映活動)
ベルリン映画祭:審査員特別賞(銀熊賞)等受賞
キネマ旬報1980年代ベスト・テン第1位
むかし、男のかたわらには
そこはかとない女の匂いがあった。
男にはいろ気があった。
1980年、東京タワーの足元に銀色のドーム型テントが現れた。今や伝説として語られ始めているこの移動映画館が、シネマ・プラセットの初製作、上映作品が『ツィゴイネルワイゼン』である。噂が噂を呼び、動員観客数は単館上映としては異例の9万6千人を記録した。
内田百聞の「サラサーテの盤」ほかいくつかの短編小説を、生と死、時間と空間、現実と幻想のなかを彷徨う物語として田中陽造が見事に脚色。士官学校教授の青地(藤田敏八)と無頼の友人中砂(原田芳雄)を中心に、青地の妻周子(大楠道代)、中砂の妻と後妻(大谷直子のニ役)をめぐる幻想譚として描く。破天荒な中砂に翻弄される青地はいつしか現実と幻のなかに惑い、妻周子が青地に誘惑されほだされているという懸念に取り憑かれる。そんな矢先、中砂は「とりかえっこ」を提案する。なにをとりかえるのか…。そして中砂の死後もなお青地は見えない影に弄ばれる。奇妙な物語のまにまにサラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」の音色が物悲しく響き、音色のなかに一瞬、微かな声が聞こえてくるが、何を呟いているのかはわからない。
〈about 鈴木清順〉
映画のテロリスト。
プログラムピクチャーの脚本を巧みに換骨奪胎し、全く違った独自の作品に仕上げてしまう、天才的アルチザン(職業監督)。常にスタイリッシュで実験的で人を喰った映像、無秩序で先の読めない奇妙な傑作を作りづつける。
スターシステムを敷き、アクションと歌を基本とする日活映画の製作ラインの中で生まれた監督だが、皮肉にも会社のそうしたシステムがマンネリ化し出した時期に俄然、独自の美学が花開くことになる。映画のスタイルだけではなく、体制と戦いつづけた監督としての在りようも、若い監督たちに影響を与えている。ウォン・カーワァイ監督(「花様年華」)、ジム・ジャームッシュ監督(「ゴースト・ドッグ」)やクレール・ドゥニ(「パリ、18区、夜」)、「肉体の門」を愛するアルノー・デプレシャン(「そして僕は恋をする」)など…。
最大の傑作「殺しの烙印」は時代、国籍を超え、永遠に語りつづけられる。
座右の銘は「一期は夢よ 只 狂え」