大反響で上映を終了した『キャタピラー』ですが、多くのお客様からのリクエストにより再上映が決定しました! 10/16(土)〜10/22(金)の1週間の上映となります。見逃してしまった方も、あの衝撃を再び! という方も、ぜひこの機会にご覧ください。
「連合赤軍」を撮っていたときに“学歴もあるちゃんとした若者たちが、なぜこんなことしたんだろう?”と考えていました。背景には、その親の世代がやってきたことがあるのだろうと思った。ベトナム戦争のとき、あの頃の若者たちは“親の世代に戻ってはいけない”と思ったから、立ち上がったんだろうと思う。その親の世代のことを、忘れないうちに撮っておこうと思った。僕がいいたいことは、正義の戦争なんてないってこと。戦争というのは、なんの恨みもない他人を殺すし、自分も殺されること。一番苦労するのは、女の人と子供。若い人にそれを知ってほしい。 戦争中は、僕は子供だった。覚えているのは、空が真っ赤に燃えていたことだけ。僕も兵隊になって国のために働くための教育を受けてきた人間です。映画の世界に入って、戦争のこと調べとけ!と言われて初めて調べだした。そしたら、あの頃の政治家が本当ににひどく、あの頃の日本がどれほど悪かったかってことがわかってきた。 キャタピラでは、夫婦をテーマにしてその向こうに見えてくる戦争を描きたかった。今、72歳。今撮っておかないと、もう撮れないと思った。 ●質疑応答 Q: 主人公の描き方が見事でした。 両腕、両足がない姿をどういう風に撮ったのですか? A: 大西くんの四肢を切るわけにもいかないので…(笑) 前から撮るときは、後ろに手を縛り付けたり、 寝ているときの足は、床に穴を開けたり、 最後の3カットのみCG使っています。 Q: キャタピラというタイトルについて、お聞かせください。 A: 江戸川乱歩の「芋虫」という作品があって、はじめはそこから名前 をとっていたんだけど、それが著作権の関係で使えなかった。 芋虫を英訳するとキャタピラ。戦争で人が轢き殺されるイメージと も重なったし、寺島さんは外国で賞とったし結果的によかったと思 っている。 Q: 映画の中から聞こえてくる“いなかの音”がすごくよかった。 どんなふうに撮ったのか?また撮影で苦労された点は? A: 撮影は4月だったので、田んぼのカエルの鳴き声を止めるのが大変 でした。撮影はぶっつけ本番で、何度も撮り直したりしないので虫 の音が入るのは避けられなかった。編集でそれを消すのがたいへん だった。 キャタピラはわずか12日で撮った作品。現場はものすごい緊張感で した。寺島さんは、撮影中に血尿でるくらい神経使って、終了後に すぐに病院に駈け込んでいた。大西くんは、役に入り込んじゃって 実際に自分の頭を角にぶつけてガンガンやって、本当の血流してた くらいだった。 Q: 寺島しのぶさんが、何かのインタビューの中で「最近の日本映画には 企画・脚本おもしろいものがない」と嘆いておられました。 韓国映画が最近リアル感があっておもしろい。日本の映画にはそれが ないと感じる。その原因はなんだと思われますか? A: 日本の監督がバカなんです。イケメン使えば客入ると思ってる。 テレビ局と組んで公共の電波つかって「大ヒット」だの 「おもしろい」だの言って、人をだましてる。 これからますますひどくなるだろうね。 腹たってしょうがない。 僕は、カネかけずにこれからもちゃんとおもしろい映画つくるよ。 キャタピラもお金がなかったので、寺島さんはノーメイク。 でもね、だからあの芝居ができる。 化粧すると皮膚が芝居しないんだ。 僕は、本当におもしろい映画作って、若い人が映画館へ帰ってきて ほしい、と思っている。イヤなものはイヤだと言える世代に、 自分の映画を見てほしい。大人になるとなかなか素直にイヤだと 言えなくなるから。僕は、とにかく経済がダメでも戦争のない世界 を、と思う。経済がダメだからそろそろ戦争でも…というバカな 政治家がいるけど、そういう人を選んじゃいけないよ。 Q: 義理の父が戦争体験者でしたが、戦争については全く語ってくれま せんでした。ただ「天皇に謝ってほしい」と一言だけ言っていたこ とがある。映画の中で、シゲ子が取り乱して床の間に飾ってある物 を床に叩きつけたシーンがあったが、天皇の御真影までには手が出 なかった。このあたりに何か監督の思いはあったのでしょうか? ※文中「天皇に謝ってほしい」の部分が「天皇にあやまりたい」となっておりました。質問者の方には大変失礼を致しました。お詫びして訂正させていただきます。 A: そこまでやると、右翼がだまっていなかったでしょう。 騒いでもらうと話題になるんだけどね。あれはできなかった。 右翼からやられる可能性がある。 僕はもう2、3本映画撮りたいと思ってるから。 戦争中は、天皇の御真影に1日10回くらいは頭を下げていた。 そのくらい一人の人間を神格化していた。今の北朝鮮といっしょ。 軍の幹部が悪い。 Q: 最後にひとことお願いします。 A: 僕は、今までイヤなものはイヤだと一貫して言ってきた。 しょっちゅう、白い目で見られているけどしょうがない。 とにかく、ああいう時代が来ないように…と思っている。 悪いなと思ったら反省すること、これがいちばん大事じゃない ですか?もっとおもしろい作品を考えているので、次も楽しみに してください。 |
再上映決定!! 「キャタピラー」 10/16(土)〜10/22(金) [特別料金] 会員・シニア・大学・専門学校 1,000円/一般 1,300円/高校生 500円 ※駐車割引は適用されません。 ご了承ください。 [2010/日本/1時間24分] 監督:若松孝二 出演:寺島しのぶ、大西信満、吉澤健、 粕谷佳五、増田恵美、河原さぶ 公式ホームページ →→→ http://www.wakamatsukoji.org/ 2010年ベルリン国際映画祭コンペティション部門 寺島しのぶ:銀熊賞 最優秀女優賞 「忘れるな、これが戦争だ」若松監督が痛烈に描く究極の反戦映画。四肢を失い戦場から帰還した夫と心中しようと首をしめた時、夫が尿意を催し、たちまち鬼の顔から菩薩となり世話をする…「戦争とは国家による人殺し」と痛烈に描いた本作で、主演・寺島しのぶの圧倒的な演技はベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀女優賞)を受賞した。顔が焼けただれ、聴覚も失った男は村で「軍神」と崇められるが、その旺盛な性欲、食欲は衰えず、妻は身も心も振り回される。そんな中、夫は戦地で犯し、殺した女たちの思い出が蘇ってくるのだが…。過去から一貫して変わらない反権力のまなざしで監督は「正義の戦争が、どこにあるのか」と問いかける。これはフィクションではない。肉体や精神を含め戦争はあらゆるものを破壊するということをぜひ感じ取ってほしい。 若松孝二監督 |
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